カイコホリック

蚕の皆様との愛の日々

カイコさんの病気~薬害編~

久しぶりにカイコさんの病気シリーズです。

と言っても今回は薬害、病気とはちょっと異なります。数年前に引越しをしたのですが、こちらに来てから毎年なにか「これは薬品が原因では?」と思われる事態を起こしてしまったのでそのまとめ。資料として苦しんでいるカイコさんやご遺体の写真も掲載しますので閲覧の際にはご注意下さい。

 

カイコさんが薬品に弱いというのはよく言われることなのでご存知の方も多いかと思います。当然ながらカイコさんは昆虫ですので、カイコさんの近くで殺虫剤の使用はもちろんダメ。その他、車の排気ガスやタバコの煙なども同様に注意が必要というのも有名ですね。

ちなみにタバコについては私が非喫煙者のためあまり気にしたことがなく、どの程度の濃度でどのくらいの影響が出てしまうのかはっきりとは不明です。排気ガスについても同様で、排気ガスが多くかかる場所の桑などは取り扱いに注意が必要なのかなという程度しか私はわかりません。

ちなみに今の私の家は道路沿いにあり、それなりに交通量もあるので少なからず排気ガスの影響を受けていそうに思いますが、エアコンや換気で外気が入っても別段影響はないのかなという感じ。ベランダで桑も育てていますが、摘み取ったあと1枚ずつ水洗いし、タオルで水分をふき取ってお給餌、という手順で今のところ特に問題はありません。なんどかうっかり摘んだ葉をそのままお出ししてしまったこともありますが、このときも大丈夫そうでした。

 

ではどんな時に薬害が?といいますと、まずは近所の家で殺虫剤を使用したケース。使用量や風向きによっても違うかと思うのですが、以前に上階の部屋の人がバルサンのようなものを使用したと思われるケースではてきめんでした。(使用したという確認は取れていないのですが、その日だけ不自然にドアや窓を全開にしていたり、それまで一度も見たことがなかったのに死にかけのゴキブリが多発したりと怪しい点が多いので恐らく…)

今年の7月にも似たような症状があり、今回は近所でそれらしい様子は判らなかったものの、カイコさんが苦しみだすのと同時刻に私も突然喉が痛みだししゃべると咳き込むような状態が数時間続き、恐らく何らかの殺虫剤や除草剤か、揮発性の塗料などの刺激物が使用されたのではないかと思います。管理会社に聞いても近所を見回しても原因らしいものが見当たらず、どこかから流れてきたのか…。部屋の通風孔やエアコンからの侵入とは思われるものの、防ぎようがないのが本当に怖いところです。

 

 

もうひとつの原因は完全に私のミスで、小さいカイコさんを移動させるために使用したネットの素材が原因と思われるもの。

 

シルク博物館でも園芸用のネットを使用されていたので真似してみようと袋入りのネットを購入してカットしカイコさんと人口飼料を乗せていたのですが、一晩あけるとお亡くなりになっているカイコさんや苦しんでいるカイコさんが多発。お住まいの箱から逃げようとしていらっしゃるカイコさんも複数で明らかに異常な状態でした。

確かにネットの開封時に少し薬品的な臭いはあったのですが、カイコさんに影響があるとも思わずあまり気にしていませんでした。まさかこんなことになるなんて…。

 

 

カイコさんの症状ですが、ひとつの特徴は体をよじって苦しむ点が共通しています。

 

見るのもつらいのですが、体がS字になるような普段では絶対にない体勢でお体をよじって苦しんでいらっしゃいます。また、嘔吐もありお住まいに敷いていた紙がどんどん茶色く汚れていき、吐いた分カイコさんのお体が小さくなり…とかなり見ているほうにもつらい状況に。

 

こちらは今年の殺虫剤?事件が起こる2日前のお写真なのですが、このカイコさんたちが亡くなった際にはこんな状態に。

 

 

大きさの比較はわかりづらいですが、お体がぎゅっとなっているのは見て取れるかと思います。前回はすぐお亡くなりになる方と生き延びる方で5:5程度に別れたのですが、今回は2~3日にわたり苦しんだ後に亡くなる方がほとんどで見ていて本当につらかったです。

 

ニンゲンの私にも影響があっただけのことはありかなり強力で、200~300頭ほどいらしたカイコさんがほぼ全滅となりました。丁度上蔟の直前だったのですが、先駆けて繭に入っていた方、事件前後に糸を吐き始めた方のうち5頭の方が生き残ってくださったのみという大惨事に。

 

しばらくしてからのお写真なのでおひとり既に羽化されていますが、生存組は流石の元気さ!うちおひとりがお嬢さんだったので無事ペアもでき、ぷりぷりの卵も残して下さいました。

 

見てください、このぷりっときれいな卵!!!

とは言え卵自体もなにか薬品の影響がある可能性も考えられるため、孵化していただくかどうかはまだ悩み中です。薬品に強いカイコさんがお生まれになるかもしれないし、どうしようかなあ。幸いにも休眠卵のようなので冷蔵中に考えます。

 

 

こういった異常があるとき、苦しむカイコさんですぐに気づくかとも思うのですが普段はお住まいから絶対に出ないカイコさん達も危機を察するとその場から逃げようとなさるようです。空気中の薬品のようなケースは対応が難しいですが、ネットの時のように何かいつもと違うものを入れた時にカイコさんが逃げようとなさっていたら、なにか毒性があるものという可能性を疑ってみるとよいかもしれません。

 

先日ワイルドシルクミュージアムさんに伺う機会があり薬害の件を少しお話したのですが、以前に農薬のかかった葉を食べてしまったカイコさんへの対処として「薄く水を張った容器に移し、すべてを吐かせる」という対応で多くのカイコさんを助けられたというお話をうかがいました。普段なら水はは絶対NGのはずのカイコさんなのに、こんな形で水が役に立つなんて…!水の深さはカイコさんの大きさにより異なると思われ、気門(お体の横の黒い点、ここで呼吸されています)がつかりきらない程度かなあと予想しています。次回などない方がもちろんよいのですが、もしまた同様のことがあれば実践してみます。

 

 

7月上旬にこんなかたちでほぼ全滅という事態があり、しばらくは怖くて新たなカイコさんをお迎えすることができなかったのですが、夏にカイコさんがいらっしゃらないのは流石にさびしく最近また我が家でも新たなカイコさんに孵化していただきました。次回からはいつものカイコさん記録を書いていきますね。

 

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